持続可能な地域の姿とは?下山地区のよりよい未来への挑戦

掲載号: りたらしい 114 号
発刊日 2022年3月

りたは、2022年度より市内中山間地域(下山地区)の課題解決に向けた取組を開始しています。多くの中山間地域では、少子高齢化に伴う地域の担い手の減少や遊休地(空き家・休耕田など)の増加、高齢者や若年世代を対象とした交通問題など、さまざまな社会課題を抱えています。一方、近年若い世代を中心に、アウトドアブームや暮らしの多様化(田舎暮らしや二拠点生活への関心の高まり)等の地方回帰の動きが活発化してきています。

 こうした状況を背景に、りたは「東海ろうきんNPO育成助成事業」の補助金を活用しながら、自主事業として、下山地区の方々と共に持続可能な地域のあり方を模索する取組に着手しました。2016年から5年に渡って取り組んできた乙川河川敷でのまちづくりの実践から、まちなかの問題や山間部の問題を個々の問題として考えるのではなく、乙川などの川でつながる上下流地域の関係性を見直すことで全体の最適解を探っていくことが大切という視点を持つことができたのも、この活動を開始するに至ったきっかけの一つでもあります。

下山の現状

下山地区は市中心部から約15㎞の距離にある標高約350mのなだらかな山間に位置しています。岡崎市47学区のうち人口が最小ですが、「小さなやまがのウォーキング」や「山桜を愛でる会」等の活発な地域活動があり、下山の歴史文化を象徴する酒蔵も有名です。近年では岡崎市が推進するクアオルト健康ウォーキングの認定コースに指定されるなど、豊かな自然環境を活かした地区づくりが進められています。また、豊田市との市境のトヨタのテストコース整備に伴い、地域内でこれからのまちづくりを考える「下山学区対策委員会」が発足される等、未来に向けた地域づくりが始まろうとしています。

地域リサーチ(定量調査・住民ヒアリング・遊休資産調査)

初動期は下山の魅力や地域課題を把握するための地域リサーチを行いました。具体的には、各町の人口、高齢化率や人口推計、小学校や中学校の児童数等といった定量値の整理、買い物場所や交通手段、地域資源や地域団体の活動内容といった下山の暮らしの実態調査、さらには地区全体の空き家・空き農地(休耕田)等をフィールドワークで把握する遊休資産調査等を実施しました。また、それらからは見えてこない住んでいるからこそ感じている地域の潜在的な魅力や課題を把握するために住民ヒアリング及び全住民アンケート(※)も実施しました。これらで得られた、下山の基礎データをもとに今後の活動へつなげていきます。

※下山学区総代会、下山学区社会教育委員会、下山学区対策委員会の主催により2021年8月実施(対象:  小学生以上の下山学区住民、回収率:83.4%)。 りたはアンケート票の作成、集計、分析等をサポート。

住民ワークショップを企画・コーディネート

こうした取組がきっかけとなり、岡崎市中山間政策課から、今後の活動に向けた住民の声の取りまとめを狙いとしたワークショップの企画・コーディネートを依頼され、1月16日(日)下山地区体育館にて住民ワークショップを実施しました。当日は25名の地域の方々にご参加いただき、4つのグループに分かれて、「下山学区の目指したい将来の姿」に向けた意見交換、「旧JA下山支店」の活用アイデアを出し合うプログラムを実施し、全体で27の活用案が出されました。当日の内容は現在、広報物(ワークショップかわらばん)を作成していますので、そちらをご覧いただければ幸いです。

活動を通して見えてきたもの、次年度以降の計画

今期は初年度ということもあり、まずは下山の現状を把握するため地域リサーチを中心とした取組を実施しました。それらから交通の問題(寮廃止後の中学校への送迎問題ほか)、空き家・空き農地の増加等、早急に対応策を考えるべき課題を把握することができました。一方、下山に住んでいる方々のまちへの誇りや思いも多く聞くことができ、今後は、体験プログラム等を通した遊休地の活用や交通支援の仕組み検討、地域プロモーションの戦略検討等が必要になっていきます。りたとしても、活動資金の調達を模索しながら、地域の方々と共に具体的な取組づくりに関わりつつ、今後重要性を増す社会課題に対して向き合うことができる、支援体制及びモデルを構築していきたいと思います。