「地区防災計画」とは、住民や事業者による自発的な防災活動等について策定する計画で、内閣府が主導して全国で取り組まれています。東日本大震災では、地震や津波によって市町村の行政機能が麻痺し、住民による“自助”や地域コミュニティにおける“共助”が重要な役割を果たしたことから、自助力・共助力の重要性が再認識されました。そういった経験から、行政が市内全域に関する防災の対応を考える従来の「地域防災計画」に加えて、地区それぞれで備えることをまとめる「地区防災計画」の制度が創設されました。
簡単に言い表すと、物理的に動けなくなってしまう行政の助けを待っていては助からない命を守るため、あらかじめ地域で助け合いの計画を立てておくことで、住民の命を助けようという取り組みです。
りたは防災危機管理課とともに、28年度までの2ヵ年で8地区をモデル地区として地区防災計画の策定に尽力してきました。今号では、それらの取り組みについてご紹介します。
岡崎市における取り組み
岡崎市は27年度より地区防災計画策定支援業務を開始しました。これは住民の防災知識を深めるだけでなく、ワークショップ形式(住民参加型)で実施することで、住民同士が話し合ってその町に合った防災計画をまとめるという事業です。(りたは意見交換の場をコーディネートしました)
27年度は矢作北学区、松本町、中之郷町、桜井寺町の4地区。28年度は若松東、藤川西部、戸崎六区、西本郷町の4地区。計8地区で各地区3~4回のワークショップを経て、それぞれの地区の地区防災計画を策定しました(りたが携わった地区は7地区)。また、これらの地区をモデルにして、今後他の地区で地区防災計画を策定する際に、自力で検討を進められるように計画策定マニュアルも作成しました。
計画策定までの流れ(モデルケース)
地区防災計画は、1回2時間程度、最低4回のワークショップ形式の話し合いで策定します。
第1回目 「住民の意識啓発」
防災について話し合う前段階で、基礎知識や計画策定の必要性を学びます。
第2回目 「町の防災上の課題抽出」
町の特性や課題を抽出することで現状を把握し、第3回目から検討すべきことの優先順位を決めます。
第3回目以降 「課題に対する対策検討」
テーマ討議で防災活動の担い手や復旧復興時の動き等、未検討項目がないように考えていきます。グループワーク後は全体に共有し、議論を深めます。
最終回 「対策のまとめ」
基本方針や実際の行動につなげるための行動計画を立てます。
計画完成
ワークショップ終了後は、案としてまとまった段階のため、地区の役員会等で調整し、文章でまとめて完成です。
地区防災計画策定の重要な点は、他地区の完成品をトレースするのでなく、地区の特性や課題に応じてそこに住む住民が集まって住民同士で対策を考え、計画としてまとめるという点です。
モデル地区では、ワークショップを通して「町の課題が明確になり、今後何をすべきかが分かった」という感想が多く出たり、「防災訓練を見直す」、「数年で交代する総代に代わって長期の防災専任担当を置く」など、計画の実行に向けた動きもみられました。一連のワークショップを経て、“行政に任せっきりではなく住民同士で考え行動する”という意識が高まり、持続可能な社会(町運営)に一歩近づくことができたと言えるでしょう。