社会実験から、まちの未来の日常へ10/28MeguruQuruwaを振り返る

掲載号: りたらしい 90 号
発刊日 2018年1月

  「あなたは、まちとどう過ごす?」をキャッチフレーズに10月28日(土)に実施した社会実験「MeguruQururwa 」。
 「こうあってほしい、未来の1日を実現してみる」というコンセプトのもとに、岡崎城跡の「総曲輪(そうぐるわ)」内にある公園や川、駐車場、道路といった公共空間を活用するための実験的な試みが行われました。対象エリアは「乙川河川敷〜中央緑道〜籠田公園〜連尺通り〜りぶら」です。
 今回の社会実験では、一緒に社会実験に取り組んでもらう担い手を募集するワークショップを7月17日(月)・20日(木)に開催。各種法令に基づいた企画審査の上、44の個人・団体による55件のプログラムが企画されました。
 しかしながら、当日は台風22号が近づく影響であいにくの雨模様。規模縮小や延期を余儀なくされるプログラムもあったなか、36件のプログラムが実施され、結果的には3,000人以上がQuruwaエリアに来場。雨なら雨なりの「理想の暮らし」と言えるような風景が繰り広げられ、近い未来の岡崎のまちの日常を感じさせる1日となりました。

社会実験から見えた、まちの未来の風景

●なぜ、社会実験をやる必要があるのか

 2015年から進められている「乙川リバーフロント地区整備計画」。この計画は、駅前整備や岡崎セントラルアベニュー(仮称)などの公共主導の「大きなリノベーション」と、民間の遊休不動産を活用し、新たなまちの産業創出を試みる「小さなリノベーション」を組み合わせることでエリアの価値を高めることを目的としています。そこから民間投資を誘発し、まちの賑わいの再生と持続可能な都市経営の実現を目指しています。(重点エリアは、下記の通り)

ピンク:乙川リバーフロント地区 / イエロー:主要回遊導線 「Quruwa (くるわ) 」
このエリアでは、リノベーションまちづくり (⇒Litaracy84号参照)や、かわまちづくり(⇒Litaracy89号参照)が進められており、まちに変化の兆しがあらわれてきています。

 社会実験「MeguruQuruwa」では、エリアの未来を見据え、一過性の非日常のイベントではなく、未来の日常をつくるという目的を掲げています。普段あまり活用されていない公共空間を舞台に、エリア毎に検証項目とテーマを設定。民間の担い手それぞれの「やってみたい」という思いを実行し、その活動を継続させるための可能性を検証しました。

●各エリアの検証項目と参加者の声 [ アンケートより一部抜粋 ]

▼りぶらエリア 検証項目 ~ りぶらから街へのにじみ出し ~
りぶらのエントランスに屋台を並べたり、りぶらとシビコをつなぐプロムナードに休憩スペースや展示スペースを設置。

★参加者の声:「りぶら入口付近のパン屋が買いやすくて良かった。」、「悪天候にも関わらず、利用者が多くりぶらとシビコを繋ぐ人の流れが多少できた。天候が良ければ、もっと目に見えるような人の流れをつくれたのでは?と手応えを感じた。」

☆担当者の声:「りぶらの外と中をつなぐエントランス前に屋台を並べることで、まずりぶらから出てみる、という大きな理由になった。」

▼籠田公園エリア 検証項目 ~ 未来の公園の使い方 ~
現在設計中の岡崎セントラルアベニュー(仮称)の構想にあわせ、将来のステージの向きにテントを配置。巨大テントの下でDIYワークショップやマルシェを開催。

★参加者の声:「雨にも関わらず、出店された方々のエネルギーを感じた。大きなテント内に集中して出店していたので賑わいと活気にあふれていた。」、「特別な日常というより、日々の中に馴染んだ素敵な空間になっていた。」
☆担当者の声:「将来の設計計画にあわせてテントを配置したところ、南北どちらから来た人もスムーズにテント内に取り込めた。」

▼連尺通りエリア 検証項目 ~ 回遊や滞留を促すストリートデザイン ~
籠田公園の北西交差点から連尺通り1丁目交差点までを歩行者天国にし、道路や軒下に個性的な露店が並んだ。

★参加者の声:「今日はなんか楽しい日だった。」

☆担当者の声:「普段通りすぎるだけの道路空間で、立ち話をしたり、子どもが遊んでいるのを見ていたりとそこに留まる風景があり、にぎわいを感じた。」

▼乙川河川敷エリア ~ 河川敷~堤防道路~地先まで一体的な活用 ~
堤防道路上にデッキや休憩スペースを設置し、川につながるスペースを演出。

★参加者の声:「雨が降って乙川で予定していたプログラムのほとんどが実施できなかったが、堤内テラスは魅力的だと感じた。」、「堤防道路が緑のトンネルになっており、緑の豊かさを再認識できた。」

☆担当者の声:「川を眺めるカウンターテーブルが気持ち良い使われ方をしていた。川を眺めるしつらえをつくることが重要だと感じた。」

●未来の日常化へ向けて(振り返り会より)

 11月28日(火)は主催者やプログラム実施者、サポーターを集めて振り返り会を実施。社会実験の感触や課題について意見交換をしました。プログラム実施者からは「雨で中止になった企画があり残念だったが、夢が叶ったと感じた」「今後もこのような公共空間の使い方を広げる社会実験をすべき」「休日だけではなく平日も実施したい」「次回は収益化を検討したい」などの意見が。サポーターからは「いいイベントだったので、もっと広く市民に伝わるよう情報発信の仕方を工夫してはどうか」「継続することで周辺住人の理解も得られるのでは」などの声が上がりました。それらの声を受けて、主催者である岡崎市乙川リバーフロント推進課の神谷副課長は「にぎわいと活気が一時的ではなく、将来に渡って持続するような計画を通していけるよう努力したい」と述べられるなど、次の展開に向けた期待を感じさせる場となりました。社会実験は、将来にわたって持続する未来の日常化を目指し、今後も継続的に実施する予定です。