岡崎初の本格的な市民参加事業「りぶら」の10年とこれから

掲載号: りたらしい 95 号
発刊日 2018年11月

 2018年11月1日、岡崎市図書館交流プラザ・りぶら(以下、りぶら)は開館10周年を迎えました。2004年から「ワークショップ」が開始され、その後2008年の開館に至るまで5年間に渡り「施設の基本設計(建物の基本的なレイアウト等)」「施設の実施設計(施設内の設備等)」「市民サポータークラブ(現・りぶらサポータークラブ)の設立」と、テーマを変えて継続実施されてきました。これらの話し合いや活動を通じて延べ1,000名超の市民の思いが集まり、りぶらは竣工しました。
 この一連のワークショップ(以下、りぶらWS)をコーディネートしてきたのが、天野&三矢(現・りたの事務局長と次長)です。りぶらWSは、岡崎市初のワークショップ手法を導入した本格的な市民参加事業でした。核となる年間6回の全体会議(市民も設計者も行政担当者も一堂に会す場)をはじめ、市民プロジェクト部会等も適宜設置されました。当時は康生地区内の空き店舗を借用してオープンスタジオ(りぶらWSの最新情報が得られる場所)も開設し、市民参加を促進しました。

市民の自由な活動が、りぶらの中でも外でも賑わうために

●「りぶら」に込められた願い

 「りぶら」の愛称も市民参加で決まりました。市民公募で集まった候補の中から選考委員会を経て5案に絞り込まれ、この5案が市民投票にかけられました。最も評価が高かったのが「りぶら」でした。「りぶら」を命名した市民の言葉でいうと「Liberty(自由)とLibrary(図書館)をかけあわせた造語。お日様が燦々と降り注ぐのびのびとした空間に広がる図書館で、人々が自由な発想で活発に活動をする場所」となることが期待されています。

市民参加による公共施設の計画と運営

 りぶらWSのような取り組みは「市民参加による公共施設の計画と運営」と呼ばれます。日本では、1980年代に東京を中心に実験的な試みが始まり、1990年代から徐々に広まっていきました。岡崎では、りたの前身である「岡崎CDC研究会」により90年代末に導入され、今では公共空間計画のスタンダードとなっています。

◀空き店舗を活用したオープンスタジオで中学生の声を聴く(2004)

●東海地方の都市再生拠点施設をリードした りぶら

 りぶらは、開館から10年経った今も年間140万人を超える方々によって利用されているほか、市民サポータークラブが市民目線で施設サービスの質向上を実現するなど、量・質ともに高い水準を誇っています。
 国内、特に東海地方では、中心市街地への人の流れを変えるための都市再生拠点施設として、図書館を核とした文化複合施設(市民活動センターや国際交流センターを併設)を整備する例が増えています(大府、安城、岐阜、四日市など)。こうした潮流の先鞭をつけたのが、りぶらです。

▲りぶらを参照して整備された「みんなの森 ぎふメディアコスモス(2015-)」

【開館から10年。未解決の課題に挑む】

 一見すると、りぶらは良いことばかりですが、開館から10年経っても未解決の課題があります。
 岡崎市は、りぶらの整備にあたって2つの使命を掲げました。1つは「生涯学習の拠点施設」、もう1つは「中心市街地の再活性化拠点施設」です。前者は概ね及第点だとしても、後者は改善の余地があるでしょう。年間140万人超が岡崎市内外から押し寄せているものの、その市民の流れや活動が、りぶらの中で留まっています。
 そこでりたは、りぶら内の市民活動センターの運営組織として、さらには中心市街地の再生事業「乙川リバーフロント地区まちづくり(中心市街地の回遊動線の一角にりぶらが位置づけられています)」をお手伝いする組織として、市民の自由な活動が、りぶらの中でも外でもにぎわうためのきっかけ・仕掛けづくりに取り組んでいます。その一例が「りぶらと遊ぼうプロジェクト(子育て世代のみなさんと一緒に、りぶら付近で遊ぶ方法を模索・検証)」です。こうした実験的な試みを積み重ねて、りぶらから伊賀川、岡崎城、さらには乙川へと人々のにぎわいを広げていこうと構想しています。