松應寺横丁まちづくり協議会、「まちづくり賞」受賞

掲載号: りたらしい 71 号
発刊日 2014年11月

 去る10月23日、(公社)日本建築士会連合会主催「2014年度第8回まちづくり賞」授賞式が福島県で開催された。同賞は建築士が参画している、あるいは推薦する優れた市民まちづくりを評価・表彰することでその活動を支援し、また他地域・他団体との連携強化に資する目的で実施されているもの。この栄えある「まちづくり賞」を、岡崎市松本町の地域活性化に取り組む「松應寺横丁まちづくり協議会(以下まち協)」が受賞した。今回の特集はこの受賞を称えるとともに、その取り組みをご紹介したい。

危機意識を持った住民とりた職員の出会いがきっかけに

かつての商店街アーケード。レトロな魅力を醸す一方、老朽化によるリスクも。

 今や少子高齢化は中山間地域だけの問題ではない。中心市街地に隣接する松本町は、かつて花街として栄え、戦後は松應寺を中心に商店街がにぎわっていたが、今では高齢化が進み、境内に形成された“松應寺横丁”内の建物の半数が空き家となっていた。こうした高齢化・空洞化の進行に危機意識を持った町内会、松應寺住職、そして岡崎まち育てセンター・りた職員らが出会い、この状況を何とかしようと2011年7月に「松應寺横丁にぎわいプロジェクト(現・松應寺横丁まちづくり協議会)」を発足させた。

ハレの日のにぎわいを日々の活気、そして持続可能なまちへ

 まずは松本町の魅力を広く知ってもらい町内外の関心を集めるため、空き家や路地を活用したお祭り「松應寺横丁にぎわい市」を年2回実施。毎回1,000人を超える集客を誇っている。また、このハレの日のにぎわいを日常のにぎわいにつなげられるよう、空き家を改修し厨房と雑貨販売が可能なレンタルボ汐スを擁するまちの活力拠点「松本なかみせ亭」(左写真)を開設。

自分の特技をやりがいにつなげ、人々が集う憩いの場となった。また、他の空き家も「あいちトリエンナーレ2013」の展示会場として活用されるなど、徐々に空き家マッチングが進み、今では空き家の半数の再利用が決まっている。その中には着物店やフォトスタジオ、アンティークショップなどの店舗に生まれ変わった物件もあり、まちで若者の姿を見ることが多くなった。

地域でできる高齢者支援の仕組みづくり

 さらに高齢化の問題解決として買い物難民化している高齢者のための会員制惣菜店(週2回、夕方1時間のみ営業)を開設した★。惣菜を作るのは「まち協」兼「松本町包括ケア会議」メンバーの堤久子さん。会員は原則毎回利用するため、体調の変化や安否の確認が可能となり、異変を察知した場合は、民生委員や地域包括支援センターと連携して対応するしくみとなっている。営業時間を絞ることで、お年寄り同士が顔を合わせる交流機会を創出している。松本町に限らず、近年地域課題は多様化し、当事者による主体的な取り組みなくして解決はできなくなっている。まち協の事例を参考にまずは住民が課題解決の当事者として関心を持つこと、そして自身にできる一歩からの活動の中で共感者・協力者を徐々に増やしていきながら活動を広げることが求められる。

★開設資金の一部は、岡崎青年会議所の「岡崎・幸田まちづくり応援基金」を活用。


[参考]身近に迫る社会問題

 日本は今や世界最高水準の「超高齢社会」に突入し、人口も減少していく中「空き家」の数も増え続けている。しかし、統計上「高齢者」に区分される65歳以上の方々は、地域活動の主役であり、空き家と言っても手を加えれば地域活動の拠点として十分に活用できる。つまり、「高齢者」と「空き家」は、地域の“課題”ではなく、大切な“資源”として捉えることが、地域活性化の秘訣と言える。